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38 ギプスから装具へ

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 指折り数えてこの日が来るのを待っていた。
 ギプスを外す日。手術からギプス生活に突入し、ようやっと3週間が経った。
 鉄の玉化した重いギプスを外すのだ。朝からワクワクしていた。
 早々に身支度を終えて想定よりだいぶフライングで家を出た。

 病院に着くと、まず装具室に通された。そこでマイ装具とご対面。
  今後5、6週間ほど、これと付き合うことになる。

 ダンナさんは右片麻痺で、外を歩く時は右足に短下肢装具をつけている。ウチでは装具といえばダンナさんだったけれど、私も付けることになったわけだ。同じ右足、短下肢装具。
 夫婦でお揃いのものを着る趣味なんか、これっぽっちもなかった。
 というよりめっちゃ避けていた。
 なのに……。
 この年になって、まさかこれで!な激レアグッズをお揃いで身につけることになってしまった。

 ダンナさんの装具は仕組みがロボ的。動力は人力だけどバネが『油圧式』で、ふくらはぎの両サイドを細いフレームが支える繊細なフォルムを持つ。
 対して私の装具は黒い樹脂の板でふくらはぎから下をぐるりと包み込む作り。がっちりしていて存在感がすごい。フォルムで言えばおもちゃの兵隊のブーツだ。
 ゴツゴツさが妙に可愛い。気に入った。

 アキレス腱断裂用の装具には、その踵部分にシークレットブーツみたいな踵が仕込まれている。5枚にスライスしてあるパーツをくっつけた計7センチほどの踵。
 ギプス時と同じ、アキレス腱の部分をつま先立ちの状態にキープするためのもので、この踵を毎週1枚ずつ剥がしていき、少しずつアキレス腱を伸ばしていく仕組み。

 さて。
 装具屋さんがギプスを外してくれた。
右ナマ足とは、一週間前の装具のかたどりの時以来のご対面。不健康そうな状態に変化はなし。裏にある傷はまだ見ない。
 足に装具をセットする。オーダーメードだけあってぴったり。
 そういえばオーダーメードで履物を作ったのは生まれて初めてだ。
「ギプス、持って帰りますか? 記念に持って帰る方もいらっしゃいますよ」
 装具屋さんが言った。
「いえ、いりません!」
 即答した。
 お世話になったギプスだけど、これ以上お付き合いする気などこれっぽっちもない。お別れにためらいはなかったけど、そう言われて、記念に1枚、スマホで写真をとっといた。
「立ってみましょう。まずは三分の一荷重なので、松葉杖を使っ て、足は軽くつける程度です」
 そのようにやってみるが、難しい。ずっと浮かせていた足だ。痛さもまだある。はっきり言って怖い。
 ソロソロと歩いて診察室へ移動した。

 医師の前で装具を外して、傷を見せる。
「傷、きれいですね。傷口はよく洗ってくださいね」
 まだ傷口を見る気にはならないから、じっと医師の顔を見ていた。
 問題はないらしい。
「三分の一荷重は2週間続けます。こけたり、急にふんばったりして右脚に荷重がかかると再断裂の危険があるから十分注意してください」
 装具になってからしばらくが一番危険だと念を押された後、歩き方の練習をするため、リハビリテーション科へ移動した。

 リハビリテーション科では、いよいよ、傷を目にすることになった――。

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